大判例

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仙台高等裁判所秋田支部 昭和59年(ネ)102号 判決

【判旨】

一職権をもつて本件訴訟の経過について調べると、記録によれば左記事実が認められ、この認定に反する証拠はない。

1 本件は、昭和五八年一二月七日被控訴人(昭和五九年六月二四日商号変更前の商号は「日本プロミス株式会社」)の代表者代表取締役東伸次の支払命令申立に基づきなされた弘前簡易裁判所昭和五八年(ロ)第二二五一号支払命令に対し、控訴人が異議申立をしたことによつて原審に係属し、昭和五九年二月一〇日の原審第一回口頭弁論期日には被控訴人訴訟代理人支配人として桜井則孝が出頭し、訴状に代わる準備書面を陳述し、同年三月九日の同第二回口頭弁論期日以後第四回口頭弁論期日までは同じく被控訴人訴訟代理人支配人として北口和孝が出頭して訴訟を追行し、同年七月六日の同第五回口頭弁論期日に原判決が言渡された。

2 控訴人は同年七月二一日本件控訴を提起したが、当審においても被控訴人側では前記北口和孝が訴訟代理人支配人として出頭し訴訟を追行した。

3 被控訴人は、本店を肩書地に、支店を青森県弘前市大字駅前二丁目一番九号におき、営業店を本店ほか五店(前記商号変更後は四店)において金融業等を業務目的としている会社であるが、前記桜井は同年二月一〇日当時控訴人の本店支配人として登記されており(同年六月二九日解任登記がなされている。)、前記北口は、同年三月九日より先の昭和五八年一二月一日以降現在まで同じく本店支配人として登記されている。

前記桜井は昭和五九年二月一〇日当時被控訴人の本店の管理部部員の地位にあり、支配人の名称を付されていたがその職務内容は被控訴人の営業店の債権管理であり、また前記北口は、同年三月九日当時以降本店の管理部次長、同年六月二四日の組織変え以降は右管理部が営業部に吸収されたので営業部所属の管理部次長の地位にあり、支配人の名称を付されているが、その職務内容は桜井と同じく被控訴人の営業店の債権管理を担当して現在に至つている。

なお、被控訴人の前記弘前支店については支配人がおかれた旨の登記はなく、本店従業員が毎月一名交代で出張しており、昭和五九年二月は桜井が同年三月は北口が出張してその業務に当つていた。

二ところで、商法三七条の支配人とは営業主の営業上の行為について包括的な代理権を有する者をいい、その代理権の範囲は営業主の営業の全般に及び、営業主といえども任意にこれを縮少しえないものであり、従つて支配人としての実質のない者に支配人の名称を付して訴訟事務に関する権限を与え、かつ支配人として登記しても、商法上の支配人とはいえず、従つてまた、その者が支配人として裁判上の代理権を有することにならないのはいうまでもないところ、前記認定した桜井及び北口の被控訴人における地位、職務内容によると、桜井は昭和五九年二月一〇日当時、北口は同年三月九日当時以降現在まで、被控訴人の本店の支配人として登記されているものの、右両名は、同本店管理部(桜井)及び同本店管理部その後営業部(北口)に所属し、その職務内容は債権管理という被控訴人の営業の一部門について代理権を有する商業使用人にすぎないものであつて、営業の全般に亘る代理権を有するものではないから、右両名が前記本件の訴訟追行時に被控訴人の実質的な支配人ではないことは明らかであり、従つてまた右両名は被控訴人を当事者とする本件につき支配人として裁判上の代理権を有するものではないというべきである。

被控訴人は、支配人が裁判上の代理権を有することに目をつけ、訴訟によつて債権の回収をはかる案件の多い自己の営業に関し、民事訴訟法七九条一項の禁止を潜脱し、従業員である桜井、北口らをして訴訟活動をなさせる目的をもつて、実質上支配人でないのに同人らに支配人の名称を付し支配人として登記をして自己を当事者とする本訴につき訴訟追行させているものと判断せざるをえない。

三そうすると、本件原審の口頭弁論手続は、訴訟代理権のない桜井及び北口の訴訟追行によつて行われた違法なものというべきであるから取消しを免れない。そして前記認定によれば、右訴訟手続の違法は、原審の訴訟手続の重要かつ広範な部分に亘つているものであることは明らかであるから、原審の審理はなかつたに等しいものといえるので、審級制度の趣旨に照らし、原審に事件を差戻す必要があると解される。

よつて民事訴訟法三八九条により本件を原審に差し戻すこととし、主文のとおり判決する。

(石川良雄 武藤冬士己 武田多喜子)

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